Thursday, March 09, 2006

イギリス陶芸事情⑤

ウェールズへ

デヴォンでの滞在を終え、M5を北上して海上の橋を渡ると、ウェールズに入った。
*MはMotor Way の略で、高速道路を示す。
イギリスもアメリカと同様、一部区間を除き、基本的に高速道路は無料。

標識を見ると、英語とウェールズ語の両方が表記してあった。

ニューポートに入る前に県道に逸れ、北上を続ける途中、目を見張るような遺跡に出会う。
「Tintern Abbey」という、13世紀に建てられた修道院の跡だった。
車を止め、しばし見とれる。



Monmouth という古い町で宿を取る。

ここは観光地のようだが、とにかく建物が古く、道が細く曲がっていて分りにくい。
おそらく、どこの古い町にもあるように、馬車を引いていた時代から続く道路は、
右折も左折も、サークルの円の中に入ってから、抜け出るようになっているのだ。
そして、冷たい空気と、まとわり着くような湿気。
幽霊が出ても、おかしくないような雰囲気だ。

翌朝、約束の時間に、ウォルター・キーラー氏のスタジオに着く。キーラー氏は、イギリスが誇る陶芸家であり、その名声はアメリカでも高く、非常に尊敬されている。

が、キーラー氏は、そんなそぶりは全く見せず、気さくに、そして丁寧に、話をしてくれる。

エクストルーダー(粘土の鉄型による押し出し成型機)、たたら成型、ろくろ成型などのコンビネーションによる、端正な作りの器。 やさしい色使いと、穏やかな人柄は、作品の中に溶け合う。




スタジオは2つあり、使う土によって変えているそうだ。
窯はガス窯で、最後に塩を使う。



ブランチをご馳走になり、いつまでもやきものの話は後が尽きない。

そして、前から欲しかった、キーラー氏の、青い塩釉のピッチャーを買う。
割れないように、大切に、ノースキャロライナに持って帰ろう。

キーラー氏の家を出て、M4に乗り、ひたすらロンドンを目指す。

会ったこともない、そして有名でもない、アメリカ在住日本人陶芸家に、 どの人も、本当に暖かく、優しかった。 遠いとこからよく来てくれた、と、目を細めて迎えてくれた。

本や写真だけで見ただけでは、やはり分らないものだ。 実際に訪ね、話し、仕事場を見せてもらうと、作品作りへの姿勢や人柄がよく見えるし、理解できる。一緒に仕事をすると、もっと分るのだろうけど。

やきものが大好きな人たちが、お互いを理解し合い、そのつながりが世界中に広まっていけば、言葉の違いや国境は、自然と意味をなくすだろう。

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