Saturday, March 04, 2006

イギリス陶芸事情④

デヴォン州への旅

ロンドン滞在も4週間目に入ろうとしたころ、薪窯の作家を訪ねるために、レンタカーを借りて、デヴォン州へリサーチ旅行に出かけた。

デヴォン州はロンドンから南西の方向にあり、酪農が盛んな美しい地域だ。デヴォンのクリームは濃厚で、めちゃくちゃ美味しいのだ。


陶芸家ニック・コリンズ

まずは、ニック・コリンズ氏の住む、デヴォン州Moreton Hampsteadへ。ロンドンからは車で4時間ほどかかった。美しいこの町は、ちょっとした高台にあり、町のシンボルの教会は、1000年の歴史があるという。くねくね曲がった狭い道路が迷路のように巡っている。




ニックのスタジオは、そのくねくね道路の脇にある大きな樫の木の袂を、入っていったところにあった。
ハンドメイドの家と窯、野ざらしの作品たちが脇に並んでいる。

見かけと違い(笑)、ニックは穏やかで、やさしくて、静かな印象を持っている。初めて会う日本人に、丁寧な英語で、ゆっくりと話し、そして暖かく迎えてくれた。



土は、地元のものを使う。石はぜのように見えるのは、コーンウォール地方で取れる砂。蹴ロクロで、ゆっくりと、ひとつひとつ作っている。



薪窯は、穴窯に似ているけど、もっとシンプルな形で、トンネルのようだ。



夕飯をご馳走になり、やきものの話に花を咲かせ、夜遅くまでお世話になってしまう。
そして同じ町にある、かわいらしいB&Bで長旅の疲れを癒す。
オーナーのヴェロニカさんはアルゼンチン出身で、イギリスにやってきた。
用意してくれた朝食の、本当に美味しかったこと。




スヴェンド・ベイヤー氏

ニックの住む町Moreton Hampsteadから車で50分ほど北に行くと、Sheepwashという集落がある。
ここには、陶芸家スヴェンド・ベイヤー氏がスタジオを構える。

手入れの行き届いた、庭や建物。大きな森は、スヴェンドが植林したものだ。

私が到着したときは、窯の薪を整理していて、「薪を積み上げるのに、正しい方向があるんだよ。パズルのようにね。ちゃんと積み上げると、雨水がかかってもそれほど湿気ない。1日中でもやってて飽きないな。」と話す。



作品は、焼き締めで、豪快だ。とてもシンプルだ。
窯も、少しも狂わずブロックが積まれ、美しい形をしている。

アメリカ、アジア、ヨーロッパ、とさまざまな国でワークショップや展覧会をこなす。




クライブ・ボウエン氏

スヴェンドのスタジオから5分もしないうちに、陶芸家クライブ・ボウエン氏のスタジオに着く。この辺りに昔からある酪農家の家を購入し、スタジオを築いた。



低火度の土に色鮮やかな釉薬を重ねる。日本では「民芸」と評されるボウエン氏の作品だが、自分の生活を楽しく、暖かく、豊かなものにするための陶器を作り続けるというスタイルは、もはやカテゴライズの必要はないかもしれない。

デヴォン州には、この他ジョン・リーチ氏やペニー・シンプソン氏など、多くの陶芸家がスタジオを構え制作に励んでいる。交通の便利な地域ではないので、なかなか気軽に訪ねることはできないが、美しい自然と町並みの残るデヴォンは、イギリス陶芸の最前線と言えるだろう。



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