Sunday, March 01, 2009

土のこと

私は陶芸エンジニアではないから、化学的に詳しいことは書けないけど。でも日本とアメリカの一般的な陶土の違いについて、ちょっとだけ書き記しておこう。

最初にアメリカの陶土。種類は大きく分けて3つ、Earthenware(非常に焼成温度の低い土、オートンコーンで04番とか)、 Stoneware(オートンコーン6番で焼き締まる陶土)、そして Stoneware(オートンコーン10番)。どの土製造会社の陶土も、また本や教科書などの土調合レシピも、この3種類に大まかに分けることが出来る。それにちなんで釉薬も、04番、6番、10番と分かれている。

ちなみにオートンコーンのそれぞれの焼成温度は、
04番 1060~70℃
6番  1220~1240℃
10番 1280~1300℃
となっている。(焼成方法や焼成レートによって異なる)

*詳しくはオートンのウェブサイトのセラミックスの辺りに書いています。
参照 http://www.ortonceramic.com/

上の写真は窯出し後のオートンコーン。右から12番、11番・・・と並んでいて、窯焚き最中の温度が目視できるようになっている。

余談だけど、日本では昔ゼーゲルコーン(http://www8.ocn.ne.jp/~seger/)の方が一般的だったし、確か京都の工業試験場とかでもそれに似たコーンを作っていたと思う。だけど今では、オートンの方がシェアを取ってしまったのではないだろうか。

さておき、アメリカで陶芸をするなら、その3つからどれを選ぶか、の問題だ。04番と6番はドラム缶みたいな形の電気窯で焼成でき、コストも安いことから、素人でも非常に簡単に作品が作れる。町の陶芸教室や自分の工房で陶芸作品を作る、という、陶芸に対する「難しさ」のハードルをぐいっと下げた材料と手段だ。あとオブジェを作るアーティストは、アースンウェアを使って低い温度で焼成して作品を作っている。絵の具のように釉薬の色がカラフルなのと、焼き締まるとか水漏れがしないといった制約が無いからかもしれない。

対して10番は、焼成に対する設備のコストが高い。電気窯でも性能の良いものが必要だし、ガス窯ならばもっと設備投資にお金がかかる。だが、実用陶器で生計を立てている陶芸家はたいがい10番で作品を焼成しているんじゃないかな。以前マサチューセッツの大学院で作品を制作していた時は10番の土でガス窯で焼成していたけど、私以外はオブジェばっかりだったから、ガス窯を一人で占領してしまっていたなあ。

番外の薪窯焼成は、少なくとも10番以上、時には12番が倒れるから、1300℃以上の高温で長時間の焼成になる。私もしばっさんも薪窯で作品を作っているから、当然10番の土では弱すぎるので、薪窯専用の土を使っているのだけど、やっぱり原土や市販の陶土、長石、を混ぜて、自分たちの焼成方法に合った土を作らねばならない。そんな強い土を、しばっさんの立ち上げた「スターワークス・セラミックス」が作って販売しようとしているのだけど。
新規に立ち上げられた、スターワークスのクレイファクトリー

さて気になる信楽の土は、土工場がたくさんの名前の陶土を販売しているけど、基本的にそれぞれの土によって焼成温度が異なるので、工房や陶芸家が各々の調合で、土練機でいろんな土を混ぜ合わせて、陶土を作っていた。食器ではたぶんオルトンで7~9番が多かったと記憶している。穴窯用の土は、黄瀬(きのせ)土とか篠原(しのはら)土とかがあるけど、普通の陶土より砂っぽくて、ざっくりしていた。3~4日焼成するから、12番ぐらいまで温度が上がるだろうし。でもそれでも焼き締まってなかったような感じがした。水がしみるのもこれまた味、みたいなところがあるからかもしれない。

一土、二窯、三細工、と信楽では言われていたけど、まあやっぱり土が一番大切だ、ということだ。

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