Thursday, May 03, 2007

グラウンドホッグ・キルンとは


グラウンドホッグとはリス、タヌキ、アナグマみたいな動物でアメリカ大陸にたくさん生息している。今回は、この動物の名前をつけられた伝統的な薪窯、「グラウンドホッグ・キルン」の紹介をしたいと思う。

この窯は、記録によると17世紀ごろに、ドイツとイギリスから入植してきた工人が伝え、ジョージア州、サウスカロライナ州、ノースカロライナ州と広がったものだという。

形はトンネルのようで、火袋にロストル(空気の穴)があり、火垣があって物を置くスペースがある。天井は低く、床には硅砂が敷かれている。煙突は窯の幅くらい広く、高さは日本の一般的な薪窯のよりも低いだろう。窯のアーチに何箇所か穴が開いてあり、そこから塩を投入できるようになっている。要は、トンネル型の塩窯だ。







前の記事にも書いたが、シーグローブでは昔から、ムーンシャイン(自家製ウィスキー)のための酒瓶を作る需要があった。奇妙な形の人面壷(フェイス・ジャグ)やシンプルな壷など、たくさんの器が焼かれた。窯の中に棚を組まないため、背の高い器(壷など)を焼くのに適していた。


ロストルがあるため、薪は非常によく燃える。信楽の穴窯のようにオキ(炭)が溜まることは無い。だから一つ一つの薪は幅広く大きい。それでも完全燃焼できるのだ。またそのために、焼成時間も非常に短い。一般的にはバーナーでのあぶりが数時間、薪投入から12時間程度で焼成が完了する。

私が4月下旬にグラウンドホッグ・キルンを焚いたときは、あぶりに12時間、薪投入が15時間だった。これでも何とか長く引っ張ったのだが、上がる温度を止めることがとても難しかった。どちらかと言うと、酸化気味の焼成になりやすい。火口が広いので薪を入れるときに空気がたくさん窯の中に入るのと、煙突の断面積が広いので炎が煙突外に抜けやすいのではないかと思う。


グラウンドホッグ・キルンおよびノースカロライナの陶芸史の参考文献としては、陶芸家でもあり研究者でもある、ナンシー・スウィージー(Nancy Sweezy)氏の書いた「Raised in Clay」が最適だ。陶芸家としての観点から見た、細かいデータやメモ、ノート、写真がこの1冊にまとめられている。

ノースカロライナ大出版の、この本の紹介ページ
http://uncpress.unc.edu/books/T-1341.html






また、日本語で書かれた文献で「グラウンドホッグ窯」に言及しているのは、日本工芸の研究の第一人者であり、スミソニアン博物館フリーアギャラリーの学芸員、ルイーズ・アリソン・コート(Louise Allison Cort)氏の「アメリカにおける薪窯焼成の歴史」の記事だろう。このアーティクルは滋賀県立陶芸の森の「大信楽展」(2001年開催)の展覧会図録に集録されてある。

陶芸の森ウェブサイトより
http://www.sccp.jp/modules/tinyd1/rewrite/past_H13.html






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