Monday, March 26, 2007

NCECA in ケンタッキー州ルイビル

3月14日から17日まで、ケンタッキー州ルイビルに滞在した。NCECA(National Council on Education for the Ceramic Arts: 全米陶芸教育委員会)という、陶芸教育カンファレンスが行われており、それを視察し情報収集するために出かけた。NCECAは毎年アメリカ各地で行われていて、約一万人も参加者があるらしい。

教育関係の催しだけではなく、陶芸科のある大学をはじめ、陶芸材料を扱う会社やアートギャラリー、陶芸雑誌出版社、アートセンターなど、陶芸を取り巻く各業界や関連団体がブースを持ち、宣伝や情報配布を行っている。

会場となっているコンベンションセンターはとても大きくて、なかなか全部の会場を回ることができない。

シンポジウムやセミナー、レクチャー、公開制作ワークショップなどが同時進行で行われていて、タイムマネージメントも大変だ。あちこちで古い友人や知人、その紹介で知り合う人々など、歩いては立ち止まって、を繰り返さねばならない。

とりあえずプログラムをざっと見て、見ておきたいレクチャーの時間をチェックし、空いた時間で興味のある業者・団体のブースを回った。

2001年に最初にアメリカに来た際に、研究生として在籍したマサチューセッツ州立大学ダートマス校の陶芸科のブースにも寄り、恩師や学生と話をすることができた。

アメリカの大学院で陶芸を学ぼうと思う学生は、こういうチャンスに先生や在学生から話しを聞き詳しい情報を得られるので、良い機会だと思う。

業者のブースでは、釉薬材料を扱う会社、窯を販売している会社、道具販売会社など、柴田の仕事に有益そうな業者のカタログやサンプルをもらい、営業の人と少し突っ込んだ話などをした。

できるだけ名刺や手持ちのパンフレットを配り、知らない人に興味を持ってもらう努力も怠らず。

朝から晩まであちこち歩き回り、夜は久しぶりに出会った親しい友人とレストランで夕食を共にし、ホテルに着いたら何とかシャワーを浴びて、ベッドに倒れこむという毎日だった。


日本の陶芸教育界には、こういう全国規模のイベントは無かったように思う。小さな国に数え切れないほどの窯業地が集まり、それぞれがヒエラルキーを持つ日本の陶芸は、世界的に見れば異常なほどのレベルの高さだが、国としてのまとまりはないようにも見える。

韓国では二年に一度の大きな国際陶芸コンペティションを、国を挙げてのイベントに育て、国際陶芸センターや美術館の設立、国際陶芸シンポジウムの開催など、その発展は目覚しい。

中国、台湾もそれに続けと国際コンペやアートセンター設立、国際交流ワークショップを積極的に行っている。韓国・中国・台湾のどの国も、英語でしっかり情報発信をしているので、英語圏の国の人々には非常に分かりやすい。

英語を話すアジア人陶芸家もどんどんアメリカにやってきて、国際交流の架け橋となっている。アメリカの陶芸業界の目は、日本ではなくその他のアジアの陶芸文化交流に注目しているように見える。一時「陶芸天国」とも呼ばれ敬われた日本の陶芸は、最早その神秘性を失ってしまったのかもしれない。

来年のNCECAは、ハリケーン・カトリーナで大きな災害を受けたルイジアナ州ニューオーリンズだ。噂ではホテルの一部がまだ改修が終わってなくて、大きなイベントを行える状態ではないらしい。

しかし一万人の参加者を持つNCECAが町にもたらす経済効果はかなりのものだ。

ホテル滞在費、NCECA入場料(設備使用料を含んでいる)、タクシー等交通費、レストランでの食費、夜の社交費(笑)、個人的出費云々を合計すると、4日間で少なくとも一人当たり1000ドルは使うだろう。これだけで軽く12億円だ。被災地復興にはそういうお金が一番効果があるので、間に合うといいけど。

アメリカでは、ビジネスネットワーキングと陶芸教育は非常に距離が近い。日本でも最近産学連携という言葉が多用されているけど、ちょっと前までは高等教育機関(特に文系)は商売(ビジネス)とは一線を引く、みたいな風潮ではなかったろうか。

個人的には、陶芸教育は崇高でアカデミックな面を追い求めるだけではなく、社会の中での存在意義を高め、よりよいものづくりの生産性を実現可能にするトレーニングも行える機関であるべきだと思う。

まあこれには賛否両論あって、陶芸を工芸と見るかアートとして見るかで全く異なるのだが。

多くの人に出会い、たくさんの情報を得て、充実しつつ非常に疲れた出張だった。

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